【INTRODUCTION】
日本映画界の異端児・石井隆がついにその沈黙を破る。待望の新作の名は『人が人を愛することのどうしようもなさ』。『天使のはらわた』以来、彼が描き続けてきた”名美”シリーズのまさに頂点に立とうかという、ねじれた男女の愛憎劇だ。石井ワールド究極のヒロイン・名美の継承者として指名を受けたのは『GONIN2』の女優・喜多嶋舞。前作を超える極限のエロスを映像に噴出させようとしていた石井隆は、喜多嶋舞を想定して初稿を書き、熱烈なラブコールを彼女に送る。
「喜多嶋舞の裏も表もすべてを描いてみたい」(監督・石井隆)
「震えるくらいにドキドキしている」(女優・喜多嶋舞)
都会の闇と男の欲望にまみれどこまでも堕ちていく女…。これまで石井隆が描いてきた”名美”の世界は、女優・喜多嶋舞の出現によりさらに凄絶なものとなっていく。深夜の山手線の車中、座席で大きく脚を広げ毒々しくけばけばしく化粧をする。廃墟の病院で乳房を揉まれながら、背後から強引に貫かれる。あるいは両足首を椅子の脚にコードで縛り付けられ、男たちの電気拷問責めに遭う…。並の女優なら、聞いただけですくんでしまいそうなこのプロット。だが喜多嶋舞は決して臆することがない。それはいままで平穏だった自身の日常への反乱か? それとも、自らも石井隆の大ファンで、その新作を観るのが至上の喜びだったと言う彼女の女優魂か? 石井隆の設けたハードルが高ければ高いほど、女優・喜多嶋舞はこの狂気の世界に深く身を投じていく。喜多嶋舞は言う。「不健康な映画って観たくない?」。
その危険な囁きは”名美”の唇の熱い吐息となって、闇にくすぶる男たちの欲望をざわざわと波立たせる。
【キャスト】
喜多嶋舞/津田寛治/永島敏行/美景(みかげ)/竹中直人
【スタッフ】
監督・脚本:石井隆